<中小企業金融>金利低下でも元気印の信金・信組はどこ?

信用金庫や信用組合は自営業者などに身近な金融機関。金利低下、人口減少などでどこも苦しいが、頑張っているところも多い。独自の取り組みで存在感を増す信金・信組をリポートする。(金融ジャーナリスト・浪川攻+編集部)【週刊エコノミスト編集部】

◇し烈な貸出先の奪い合い

「明日、当金庫の理事とおじゃましたい」──。

今年春のある日、東京都港区で部品製造業を営む社長のもとに、都内の大手信用金庫の担当者からの突然の電話が入った。翌日、社長が出迎えると、信金の理事が開口一番に切り出した。「御社の借り入れを当金庫に一本化してほしい」。要するに、他の金融機関からの借り入れを自分のところに移す、いわゆる「肩代わり」をしたいというお願いだ。そのために理事が提示した条件は「他の金融機関よりも0.3%の金利引き下げ」だった。

この会社のメインバンクは他の信金で、大手信金はそれに次ぐ準メインという立場。メインの信金からは約1億円を借り入れており、年間の利払いは約200万円。年0.3%の金利引き下げなら約30万円分の負担が軽くなる。

しかし、思案した結果、社長が下した結論は「お断りします」だった。メインの信金はあれこれと相談に乗ってくれているが、今回訪れた大手信金は最近、担当者がトンと姿を現さなかったからだ。結局、社長はこの大手信金との取引を解消してしまった。

◇貸出金利回り1ポイント低下

信金や信用組合の業界で今、金利競争が激化している。信金全体の貸出金利回りは2007年度、2.63%だったのが、16年度は1.70%と10年間で1ポイント近く下落した。貸出金利の低下に悩むのは、メガバンクなど都市銀行や地方銀行、第二地銀も同じだ。信金同士だけでなく、地銀や第二地銀も入り乱れて貸出先の奪い合いを繰り広げている。

地方の信金、信組になると、少子高齢化や人口減少、中小企業数(事業所数)が減少を続ける中、すでに実質的に白旗を掲げかけているところすらある。人材の新規採用を絶って久しく、ひたすら業務の縮小に経営を集中させている。

あるいは、生き残るために経営統合しようにも、「統合相手がみつからない」(地方の中堅信組)という事態もある。バブル崩壊後の不良債権処理の過程で、信金、信組は大規模な再編が進んだ。信金、信組は営業地区が限られるため、県境をまたぐ合併もままならない。「最終的には自主廃業、解散」という苦い選択肢も排除できなくなっている。

ところが、である。そんな暗いムードを吹き飛ばすような粘り強い取り組みを続ける信金、信組もある。

◇第一勧業信組(東京都)無担保・無保証の「芸者さんローン」

その例が、東京都内を地盤とする第一勧業信用組合である。特徴的なのは、独自に編み出した「コミュニティーローン」である。地域にはさまざまな人的なつながり(コミュニティー)があり、つながりの中に信用が生まれていることに着目したローンだ。

その第1号の「芸者さんローン」は16年春に誕生した。文字通り、都内に六つある花街の芸者さん向けの無担保・無保証の事業ローンで、自らの小料理店開業を計画する芸者さんなどが利用している。各花街で料亭などを運営する組合長を信用組合の「総代(そうだい)」に招き入れ、「芸者さんローン」では総代となった組合長による紹介を人物評価の軸に据えている。

原則無担保、無保証のコミュニティーローンは「芸者さんローン」を皮切りに、「皮革事業者ローン」「税理士ローン」などへと広がっている。

同信組の新田信行理事長は「信組、信金という協同組織の金融機関が、原点にきちんと立ち返れば、取り組むべきことはいくらでもある」と強調する。

◇いわき信組(福島県)震災直後に顔パスでローン

11年3月の東日本大震災後、福島第1原発事故も追い打ちをかける中、震災からわずか2日目で店舗の営業を再開したのは、いわき信用組合(福島県いわき市)だ。震災直後でも着の身着のままで避難した被災者向けに無担保、無保証の低利ローンを提供。「お客さまはすべて顔を知っているので、本人確認は身分証明書がなくても融資ができる」と当時、いわき信組の職員は話していた。震災直後に実行した無担保・無保証のローンは、2年後には全額回収された。

いわき信組の江尻次郎理事長は、地域コミュニティーにしっかりと根付いた取り組みを「社会関係資本」という概念で説く。信用力を担保となる資産などで評価するのではなく、信頼、互酬性などコミュニティーから得られる価値に重きを置く考え方と言える。

同じ金融であっても、株式会社の銀行は「顧客を信用できるかどうか」に傾注しているのに対して、本来の協同組織金融機関は「顧客から信頼されるかどうか」に奮闘しているという本質的な相違点がある。江尻理事長は「地域があってこそのいわき信組。我々は地域に恩返しする」と力を込める。

金融庁は11月10日に公表した新年度の金融行政方針で、地域金融機関について「地域の企業・経済に貢献していない金融機関の退出は市場メカニズムの発揮と考えられる」と指摘した。地域金融機関は自己増殖のために存在しているわけではないと警告した形だ。

地銀と肩を並べて貸し出し競争に明け暮れる信金、信組には、協同組織としての存在意義を見いだせない。地域のために何ができるかを、それぞれが真摯(しんし)に自問する必要がある。

(週刊エコノミスト12月5日号から)

金融機関の本来職務を考えて欲しい。そして、実行すること!!!